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資生堂パーラーの温かいもてなし

土曜日。

ふと思いついて,レストランでの昼食をツマに提案。
2週間前の土曜日もそうしようと約束していたのだが,震災でちらかったものの片づけをしている間に,それどころではなくなっていた。
それで改めて提案。
行き先は銀座7丁目の資生堂パーラー。
ムスコにとっては初めてのレストランとなる。
池波正太郎ファンのワタシとしては,経験させてあげたい場の一つである。

* * *

予約の電話を入れ,幼児連れでも構わないかと確認すると,快い返答。
バスに乗って銀座四丁目で降り,歩行者天国を歩く。
暖かい土曜日の午後。

* * *

席に案内される。
ムスコには幼児用のイスが用意されている。
水の入ったコップにはストローがついている。
おいしそうに飲むムスコ。
給仕の方がニコヤカに話しかけてくれる。
おいくつですか?——2日前に誕生日を迎えたばかりで。——それはそれは,おめでとうございます。

* * *

チキンライス,魚介類のソテー,ポテトサラダを食べる。
ぬくもりが感じられる味。
それに時間がゆったりと流れている。
こんな穏やかな空気を感じたのはいつ以来だろう?

* * *


そろそろお会計という段になって,「しばらくお待ちください」と言われる。
そして,「ささやかですが,当店からのプレゼントです」と,ムスコの誕生祝いのデザート。さらには,フロアのお客様からの拍手。

突然の贈り物。

ツマと2人で涙ぐむ。

* * *

ムスコは居心地がよさそうだった。
初めて連れて行ったレストランが,資生堂パーラーで本当によかった。

ありがとうございました。温かな資生堂パーラー様。

メイからムスコへの「てがみ」・「てがみ」(Fairlife)

金曜日。
帰宅後,ポストを開けると,一通の「てがみ」。
メイから,ムスコの誕生日を祝うてがみだった。
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メイは今年度から小学校3年生。
利発でココロの優しい子どもに成長した。

ムスコはバスや電車といった乗り物が大好きになっているので,「でんしゃ!」「でんしゃ!」とおおはしゃぎ(新幹線という単語はまだ意識の中に形成されていないようだ)。
ほんとうにありがたいことだ。
ありがとう。

* * *

土曜日の朝。
東日本大震災勃発以来,初めてiTunesを立ち上げる。
選んだ一曲がFairlifeの「てがみ」。

Fairlifeは,水谷公生さん・春風さん・浜田省吾さんのユニット。
アルバム『みちくさ日和』の最後を飾る一曲が,この「てがみ」だ

いまのシチュエーションでは少し辛いものがあるが,何度聴いてもこの曲は涙腺が緩んでしまう。
遠くに住む人を想う春風さんの詩。きっぱりとした水谷さんのアレンジ。浜田省吾さんのゆっくり語りかけるような歌声。

はい。一日に一度,空を見上げることも,声を出して歌う余裕は今のところないけれど,「メイからの手紙」で,仕合わせです。


「それを『希望』と名づけよう」(佐野元春さんの詩)

地震から1週間。
日ごと増える死傷者の数。
それでも,ここ東京湾岸では,日々の生活を営もうと,理性は働いている。
(会社近辺に液状化後の埃にも少し慣れた。これくらいは我慢だ)。

* * *

木曜日。
今晩は首都圏も寒く,大幅な電気需要の予想。そのため大規模停電が起こる可能性があり,政府から鉄道機関に間引き運転の指示。それに伴い早々に帰宅。

* * *

ムスコは元気をとりもどしている。
ワガヤみんなで,一緒にウドンを食べる。
ツマの料理だ。

* * *

早めに寝る。
でも,25時くらいで起きてしまう。

いろいろとインターネットで情報収集。
情報収集しながら,わが日本を代表するアーティスト「佐野元春」さんのホームページを見る。
こちら。
http://www.moto.co.jp/

* * *

「つまらない大人にはなりたくない」

「ガラスのジェネレイション」の一節。
確か佐野元春さんがデビューして,30年は過ぎていますね。
でも,この曲はいま聴いても,アリアリと高揚感を発し,「Young bloods」は,故郷から離れる前の,最後の1曲でした。

「Young bloods」 の一節。
「鋼のようなウィズダム」。

* * *


「それを『希望』と名付けよう」。
佐野元春さんの,新しい詩です。
どうか,皆さん。
この佐野元春さんが書いた「それを『希望』と名づけよう」の詩を読んでください。



地震の翌日とベートーヴェン

5時30分ころ「新潟のほうで地震」とツマに起こされ,呆然とする。
新潟中越を震源地とする新たな地震。
いったいどうなってしまったんだ・・・。

* * *

その後,知り合いの方々の安否確認。
幸いなことにみなさんご無事だった。
自宅に帰れなかった社員もたくましく,なんとか生きていた。
それが終わってから脱力。
ツマも大変だったろうが,横にならせてもらう。

* * *

義理の妹がワガヤを気づかって来訪。
ムスコの相手をしてもらう。キャッキャと嬉しそうだ。
ツマの実家の多摩地域は地盤が固く,さほどの被害もなかったとのこと。
ひるがえってワガヤは明治期に造成された埋め立て地。海も近い。そして建物も築40年。
一日報道されていた東北地方のすざまじい光景を見るたび,ワガヤも何があっても不思議ではないことに,一気に「恐れ」が全身を襲った。
ささやかな日常が営めることへの感謝と,それが一瞬にして失われたかも知れない「恐怖」。
今日のワタシはとてもヘンだ。

* * *

余震は続き,テレビは終日地震報道。
そしてツマからの提案。音楽を聴いてココロを落ち着けよう,と。
先日亡くなった長岡純子さん弾くベートーヴェンのピアノを聴く。
ココロに染み入る。サウンドが澄んで,ジンワリと体全体を巻き込んでくれる。

ベートーヴェンが,恐怖心を遠くへ運んでくれた。

地震による液状化

ちょうど仕事先にメールを打っているところだった。
添付ファイルつけて送信ボタンを押そうというそのとき,地震に襲われた。

* * *

様々な安否確認が済み,ワガヤの無事も確認でき,ようやく帰宅できることに。
埋め立て地に立つ社屋を出たところ,奇麗に整備されていた舗道はグチャグチャ。
「これが液状化か・・・」
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ワガヤまで徒歩で一時間。
大きな幹線道路を選んで歩くが,ところどころ泥濘んでいる。
ようやく豊洲の町の明かりが見えた。ホッとする。
ワガヤまで,もう少しだ。

* * *

今回助かったのは,インターネットのメールが生きていたことだ。
携帯,固定電話ともにまったく機能せず。メールでなんとかツマと連絡ができた。
とてもありがたいライフラインだった。

ワガヤにつく。家の中はほうり出された本であふれかえり,棚も1つ倒れている。
その他は幸いなことに無事。電気,ガス,水道も生きていた。
なにより,ツマとムスコが無事なことに,感謝した。

フタツの影

もうすぐ2歳になるムスコを連れ,バスに乗る。
ツマ・ムスコ・ワタシの一家サンニンで,お買い物なのだ。

* * *

年末から年明けにかけ,サンニンのうちの誰かの調子がいつも冴えず——それはワタシの仕事が忙しかったためであるが——,久しぶりのお出かけである。
晴天。東京の冬の日であるから,空気は乾いてい,そして、少し埃がたっている。

* * *

バス停に着く。朝の10時。太陽に照らされ,あちらこちらの影が伸びる。
ムスコを抱きかかえる。腕にずっしりとくる。
そして,ムスコとワタシの,二つの影を見る。
まだ,半分。顔の大きさが半分。
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* * *

そう。まだ「半分」だ。大きくなれ。
そしてワタシもまだ,思う道のココロ半ばにいるんだ。


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