資生堂パーラーの温かいもてなし
土曜日。
ふと思いついて,レストランでの昼食をツマに提案。
2週間前の土曜日もそうしようと約束していたのだが,震災でちらかったものの片づけをしている間に,それどころではなくなっていた。
それで改めて提案。
行き先は銀座7丁目の資生堂パーラー。
ムスコにとっては初めてのレストランとなる。
池波正太郎ファンのワタシとしては,経験させてあげたい場の一つである。
予約の電話を入れ,幼児連れでも構わないかと確認すると,快い返答。
バスに乗って銀座四丁目で降り,歩行者天国を歩く。
暖かい土曜日の午後。
席に案内される。
ムスコには幼児用のイスが用意されている。
水の入ったコップにはストローがついている。
おいしそうに飲むムスコ。
給仕の方がニコヤカに話しかけてくれる。
おいくつですか?——2日前に誕生日を迎えたばかりで。——それはそれは,おめでとうございます。
チキンライス,魚介類のソテー,ポテトサラダを食べる。
ぬくもりが感じられる味。
それに時間がゆったりと流れている。
こんな穏やかな空気を感じたのはいつ以来だろう?
そろそろお会計という段になって,「しばらくお待ちください」と言われる。
そして,「ささやかですが,当店からのプレゼントです」と,ムスコの誕生祝いのデザート。さらには,フロアのお客様からの拍手。
突然の贈り物。
ツマと2人で涙ぐむ。
ムスコは居心地がよさそうだった。
初めて連れて行ったレストランが,資生堂パーラーで本当によかった。
ありがとうございました。温かな資生堂パーラー様。
ふと思いついて,レストランでの昼食をツマに提案。
2週間前の土曜日もそうしようと約束していたのだが,震災でちらかったものの片づけをしている間に,それどころではなくなっていた。
それで改めて提案。
行き先は銀座7丁目の資生堂パーラー。
ムスコにとっては初めてのレストランとなる。
池波正太郎ファンのワタシとしては,経験させてあげたい場の一つである。
* * *
予約の電話を入れ,幼児連れでも構わないかと確認すると,快い返答。
バスに乗って銀座四丁目で降り,歩行者天国を歩く。
暖かい土曜日の午後。
* * *
席に案内される。
ムスコには幼児用のイスが用意されている。
水の入ったコップにはストローがついている。
おいしそうに飲むムスコ。
給仕の方がニコヤカに話しかけてくれる。
おいくつですか?——2日前に誕生日を迎えたばかりで。——それはそれは,おめでとうございます。
* * *
チキンライス,魚介類のソテー,ポテトサラダを食べる。
ぬくもりが感じられる味。
それに時間がゆったりと流れている。
こんな穏やかな空気を感じたのはいつ以来だろう?
* * *
そろそろお会計という段になって,「しばらくお待ちください」と言われる。
そして,「ささやかですが,当店からのプレゼントです」と,ムスコの誕生祝いのデザート。さらには,フロアのお客様からの拍手。
突然の贈り物。
ツマと2人で涙ぐむ。
* * *
ムスコは居心地がよさそうだった。
初めて連れて行ったレストランが,資生堂パーラーで本当によかった。
ありがとうございました。温かな資生堂パーラー様。
メイからムスコへの「てがみ」・「てがみ」(Fairlife)
金曜日。
帰宅後,ポストを開けると,一通の「てがみ」。
メイから,ムスコの誕生日を祝うてがみだった。
メイは今年度から小学校3年生。
利発でココロの優しい子どもに成長した。
ムスコはバスや電車といった乗り物が大好きになっているので,「でんしゃ!」「でんしゃ!」とおおはしゃぎ(新幹線という単語はまだ意識の中に形成されていないようだ)。
ほんとうにありがたいことだ。
ありがとう。
土曜日の朝。
東日本大震災勃発以来,初めてiTunesを立ち上げる。
選んだ一曲がFairlifeの「てがみ」。
Fairlifeは,水谷公生さん・春風さん・浜田省吾さんのユニット。
アルバム『みちくさ日和』の最後を飾る一曲が,この「てがみ」だ
いまのシチュエーションでは少し辛いものがあるが,何度聴いてもこの曲は涙腺が緩んでしまう。
遠くに住む人を想う春風さんの詩。きっぱりとした水谷さんのアレンジ。浜田省吾さんのゆっくり語りかけるような歌声。
はい。一日に一度,空を見上げることも,声を出して歌う余裕は今のところないけれど,「メイからの手紙」で,仕合わせです。
帰宅後,ポストを開けると,一通の「てがみ」。
メイから,ムスコの誕生日を祝うてがみだった。
メイは今年度から小学校3年生。
利発でココロの優しい子どもに成長した。
ムスコはバスや電車といった乗り物が大好きになっているので,「でんしゃ!」「でんしゃ!」とおおはしゃぎ(新幹線という単語はまだ意識の中に形成されていないようだ)。
ほんとうにありがたいことだ。
ありがとう。
* * *
土曜日の朝。
東日本大震災勃発以来,初めてiTunesを立ち上げる。
選んだ一曲がFairlifeの「てがみ」。
Fairlifeは,水谷公生さん・春風さん・浜田省吾さんのユニット。
アルバム『みちくさ日和』の最後を飾る一曲が,この「てがみ」だ
いまのシチュエーションでは少し辛いものがあるが,何度聴いてもこの曲は涙腺が緩んでしまう。
遠くに住む人を想う春風さんの詩。きっぱりとした水谷さんのアレンジ。浜田省吾さんのゆっくり語りかけるような歌声。
はい。一日に一度,空を見上げることも,声を出して歌う余裕は今のところないけれど,「メイからの手紙」で,仕合わせです。
「それを『希望』と名づけよう」(佐野元春さんの詩)
地震から1週間。
日ごと増える死傷者の数。
それでも,ここ東京湾岸では,日々の生活を営もうと,理性は働いている。
(会社近辺に液状化後の埃にも少し慣れた。これくらいは我慢だ)。
木曜日。
今晩は首都圏も寒く,大幅な電気需要の予想。そのため大規模停電が起こる可能性があり,政府から鉄道機関に間引き運転の指示。それに伴い早々に帰宅。
ムスコは元気をとりもどしている。
ワガヤみんなで,一緒にウドンを食べる。
ツマの料理だ。
早めに寝る。
でも,25時くらいで起きてしまう。
いろいろとインターネットで情報収集。
情報収集しながら,わが日本を代表するアーティスト「佐野元春」さんのホームページを見る。
こちら。
http://www.moto.co.jp/
「つまらない大人にはなりたくない」
「ガラスのジェネレイション」の一節。
確か佐野元春さんがデビューして,30年は過ぎていますね。
でも,この曲はいま聴いても,アリアリと高揚感を発し,「Young bloods」は,故郷から離れる前の,最後の1曲でした。
「Young bloods」 の一節。
「鋼のようなウィズダム」。
「それを『希望』と名付けよう」。
佐野元春さんの,新しい詩です。
どうか,皆さん。
この佐野元春さんが書いた「それを『希望』と名づけよう」の詩を読んでください。
日ごと増える死傷者の数。
それでも,ここ東京湾岸では,日々の生活を営もうと,理性は働いている。
(会社近辺に液状化後の埃にも少し慣れた。これくらいは我慢だ)。
* * *
木曜日。
今晩は首都圏も寒く,大幅な電気需要の予想。そのため大規模停電が起こる可能性があり,政府から鉄道機関に間引き運転の指示。それに伴い早々に帰宅。
* * *
ムスコは元気をとりもどしている。
ワガヤみんなで,一緒にウドンを食べる。
ツマの料理だ。
* * *
早めに寝る。
でも,25時くらいで起きてしまう。
いろいろとインターネットで情報収集。
情報収集しながら,わが日本を代表するアーティスト「佐野元春」さんのホームページを見る。
こちら。
http://www.moto.co.jp/
* * *
「つまらない大人にはなりたくない」
「ガラスのジェネレイション」の一節。
確か佐野元春さんがデビューして,30年は過ぎていますね。
でも,この曲はいま聴いても,アリアリと高揚感を発し,「Young bloods」は,故郷から離れる前の,最後の1曲でした。
「Young bloods」 の一節。
「鋼のようなウィズダム」。
* * *
「それを『希望』と名付けよう」。
佐野元春さんの,新しい詩です。
どうか,皆さん。
この佐野元春さんが書いた「それを『希望』と名づけよう」の詩を読んでください。
地震の翌日とベートーヴェン
5時30分ころ「新潟のほうで地震」とツマに起こされ,呆然とする。
新潟中越を震源地とする新たな地震。
いったいどうなってしまったんだ・・・。
その後,知り合いの方々の安否確認。
幸いなことにみなさんご無事だった。
自宅に帰れなかった社員もたくましく,なんとか生きていた。
それが終わってから脱力。
ツマも大変だったろうが,横にならせてもらう。
義理の妹がワガヤを気づかって来訪。
ムスコの相手をしてもらう。キャッキャと嬉しそうだ。
ツマの実家の多摩地域は地盤が固く,さほどの被害もなかったとのこと。
ひるがえってワガヤは明治期に造成された埋め立て地。海も近い。そして建物も築40年。
一日報道されていた東北地方のすざまじい光景を見るたび,ワガヤも何があっても不思議ではないことに,一気に「恐れ」が全身を襲った。
ささやかな日常が営めることへの感謝と,それが一瞬にして失われたかも知れない「恐怖」。
今日のワタシはとてもヘンだ。
余震は続き,テレビは終日地震報道。
そしてツマからの提案。音楽を聴いてココロを落ち着けよう,と。
先日亡くなった長岡純子さん弾くベートーヴェンのピアノを聴く。
ココロに染み入る。サウンドが澄んで,ジンワリと体全体を巻き込んでくれる。
ベートーヴェンが,恐怖心を遠くへ運んでくれた。
新潟中越を震源地とする新たな地震。
いったいどうなってしまったんだ・・・。
* * *
その後,知り合いの方々の安否確認。
幸いなことにみなさんご無事だった。
自宅に帰れなかった社員もたくましく,なんとか生きていた。
それが終わってから脱力。
ツマも大変だったろうが,横にならせてもらう。
* * *
義理の妹がワガヤを気づかって来訪。
ムスコの相手をしてもらう。キャッキャと嬉しそうだ。
ツマの実家の多摩地域は地盤が固く,さほどの被害もなかったとのこと。
ひるがえってワガヤは明治期に造成された埋め立て地。海も近い。そして建物も築40年。
一日報道されていた東北地方のすざまじい光景を見るたび,ワガヤも何があっても不思議ではないことに,一気に「恐れ」が全身を襲った。
ささやかな日常が営めることへの感謝と,それが一瞬にして失われたかも知れない「恐怖」。
今日のワタシはとてもヘンだ。
* * *
余震は続き,テレビは終日地震報道。
そしてツマからの提案。音楽を聴いてココロを落ち着けよう,と。
先日亡くなった長岡純子さん弾くベートーヴェンのピアノを聴く。
ココロに染み入る。サウンドが澄んで,ジンワリと体全体を巻き込んでくれる。
ベートーヴェンが,恐怖心を遠くへ運んでくれた。
地震による液状化
ちょうど仕事先にメールを打っているところだった。
添付ファイルつけて送信ボタンを押そうというそのとき,地震に襲われた。
様々な安否確認が済み,ワガヤの無事も確認でき,ようやく帰宅できることに。
埋め立て地に立つ社屋を出たところ,奇麗に整備されていた舗道はグチャグチャ。
「これが液状化か・・・」
ワガヤまで徒歩で一時間。
大きな幹線道路を選んで歩くが,ところどころ泥濘んでいる。
ようやく豊洲の町の明かりが見えた。ホッとする。
ワガヤまで,もう少しだ。
今回助かったのは,インターネットのメールが生きていたことだ。
携帯,固定電話ともにまったく機能せず。メールでなんとかツマと連絡ができた。
とてもありがたいライフラインだった。
ワガヤにつく。家の中はほうり出された本であふれかえり,棚も1つ倒れている。
その他は幸いなことに無事。電気,ガス,水道も生きていた。
なにより,ツマとムスコが無事なことに,感謝した。
添付ファイルつけて送信ボタンを押そうというそのとき,地震に襲われた。
* * *
様々な安否確認が済み,ワガヤの無事も確認でき,ようやく帰宅できることに。
埋め立て地に立つ社屋を出たところ,奇麗に整備されていた舗道はグチャグチャ。
「これが液状化か・・・」
ワガヤまで徒歩で一時間。
大きな幹線道路を選んで歩くが,ところどころ泥濘んでいる。
ようやく豊洲の町の明かりが見えた。ホッとする。
ワガヤまで,もう少しだ。
* * *
今回助かったのは,インターネットのメールが生きていたことだ。
携帯,固定電話ともにまったく機能せず。メールでなんとかツマと連絡ができた。
とてもありがたいライフラインだった。
ワガヤにつく。家の中はほうり出された本であふれかえり,棚も1つ倒れている。
その他は幸いなことに無事。電気,ガス,水道も生きていた。
なにより,ツマとムスコが無事なことに,感謝した。
フタツの影
もうすぐ2歳になるムスコを連れ,バスに乗る。
ツマ・ムスコ・ワタシの一家サンニンで,お買い物なのだ。
* * *
年末から年明けにかけ,サンニンのうちの誰かの調子がいつも冴えず——それはワタシの仕事が忙しかったためであるが——,久しぶりのお出かけである。
晴天。東京の冬の日であるから,空気は乾いてい,そして、少し埃がたっている。
* * *
バス停に着く。朝の10時。太陽に照らされ,あちらこちらの影が伸びる。
ムスコを抱きかかえる。腕にずっしりとくる。
そして,ムスコとワタシの,二つの影を見る。
まだ,半分。顔の大きさが半分。
* * *
そう。まだ「半分」だ。大きくなれ。
そしてワタシもまだ,思う道のココロ半ばにいるんだ。
ツマ・ムスコ・ワタシの一家サンニンで,お買い物なのだ。
* * *
年末から年明けにかけ,サンニンのうちの誰かの調子がいつも冴えず——それはワタシの仕事が忙しかったためであるが——,久しぶりのお出かけである。
晴天。東京の冬の日であるから,空気は乾いてい,そして、少し埃がたっている。
* * *
バス停に着く。朝の10時。太陽に照らされ,あちらこちらの影が伸びる。
ムスコを抱きかかえる。腕にずっしりとくる。
そして,ムスコとワタシの,二つの影を見る。
まだ,半分。顔の大きさが半分。
* * *
そう。まだ「半分」だ。大きくなれ。
そしてワタシもまだ,思う道のココロ半ばにいるんだ。